「秘密の園」伝説
「秘密の園」伝説
「秘密の園」伝説は、暗殺教団伝説とは別にヨーロッパに伝えられ、のちに複合するようになる伝説である。伝説の骨格は次のようなものである。山中に楽園のような秘密の庭園を築いた老人が、里の若者を連れてきてこの庭に遊ばせ、秘密の薬を調合して楽しませる。そのうえで老人は、若者にある陰謀に類するような使命を与え、再び戻りたければその使命を達成せよといって、目的を果たしていくというものである。
もちろん、ここでいう秘密の薬とは大麻を示唆しており、下界では手に入らない大麻に耽溺させるという点が重要なモチーフとなっている。この伝説は、おそらくアラビア民話の一つと考えられるが、ヨーロッパに伝えられるのもかなり古く13世紀初期のリューベックのアルノルドやヴィトリーのジェイムズなどが伝えている。
このような中で老人が、十字軍に「山の老人」と呼ばれたラシード・ウッディーン・スィナーンと結びつけられ、「山の老人」伝説となり、さらに十字軍によって伝えられた暗殺教団の話と複合してゆくのである。こうして秘密の園をもつ教団とその指導者(=「山の老人」)、若者の遊楽と鍛錬、そして十字軍やセルジューク朝などの要人暗殺の指示、というような現在よく知られる形に近くなる。またニザール派の城砦は主に山城であったため、いつしか「山の老人」はニザール派のフッジャ(指導者)と重なり、やがてはニザール派の中心・イラン北部アルボルズ山中・アラムート城砦のハサネ・サッバーフとその後継者たちと同一視されてゆく。
この段階の複合を示しているのが「マルコ・ポーロ」が伝えている「山の老人」伝説である。これは「教団の指導者「山の老人」が大麻によって若者を眠らせて秘密の園に連れこみ、歓楽を極めさせる。そののち再び麻薬で眠らせると彼は元の村にいる。ここで園への帰還を望む若者に老人への忠誠を誓わせて暗殺を行わせる」というものである。
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